「浅海ー、裄ー」 玄関で綾子があたしたちに手をあげる。 「あれ? 浅海泣いてる?」 「裄、何泣かしてんだよっ」 「俺じゃねーよっ」 裄をいじめる槇。 あたしは裄に手を握られたまま、必死に涙を拭う。 「浅海~? 誰に泣かされた~?」 綾子が子供に聞くように、あたしに聞いた。 「うぅー……裄っ……」 「ほらー。やっぱお前じゃん」 「えぇぇ!? 俺なの!?」 びっくりしたように、声をあげる裄。