あたしは、悪魔と契約しました。

あたしは先ほどより、歩くスピードを上げた。


「ママ!!「千尋」って、ママのこと呼んでるよ」


力はチラチラと後ろを振り返りながら、あたしに言う。


「違う」「千尋」


あたしが力に向けた声と、哲也の声が重なる。


「ママ?」


そして立ち止まった力のことを、あたしは抱きかかえる。


3歳になろうとしている、力。


15キロ近くある力を抱え、歩くスピードは先ほどより遅くなる。


「千尋!」


そんなあたしの前に、哲也が先回りした。


目の前に、哲也が居る。


会いたかった、人が居る。


会ってはいけない人が居る。


あたしはギュッと、力を抱く手に力を込めた。