驚いて、


何も考えずに『通話』の文字をたたく


つながっちゃった、どうしよう


なに、話せばいいの?


友達と、…ちがった


彼氏さん、と
電話で話したことなんて、ないもん


少しの間が空いて


携帯から、空くんの声が聞こえてきた


機械を通して、すこし違って聞こえる
空くんの声も


すごく、耳に、くすぐったい


『…伊織ー?』


『伊織、です…』


恐る恐る、携帯を耳に近づけて
なんとか話し出す


顔見て話すのも、難しいけど
携帯越しの会話も

なんだかすごく難しい


人目なんてないのに


『あ、よかった。つながった!』


あ、きっと空くん、笑ってる


表情豊かな空くんの声は
笑顔が想像できるくらいに
楽しそうな声で…


なんだか嬉しくなった


『…えと、何か、あったの?』


『いや、そういうわけじゃないけど…』


少しの間が空いた


『明日!迎えに行くから!


もう早く寝なよ!おやすみ!


って言いたかった、だけ!』


また、ときめいてしまう


今日1日、ずっとだ


胸が苦しくなるくらい、
わたしは、空くんが好きみたい


『…うん、朝、待ってるから…!


空くんも、お、おやすみ…!
また明日ね』


なんとか口から言葉を絞り出した


『うん、明日』


そして、ぷつりと通話が切れた


「おやすみ、だって…」


普段、家族としか交わさない言葉を



好きな人と、言い合えるのって


なんか、すごく、いいな