なんとか、滑り込みセーフの登校


外は、切れてしまいそうなほどに冷たい空気なのに


体の中は燃えているかのように熱かった


一限は、現代文の授業


確か、教科書は机の中に入れっぱなしだったはず


現代文の先生が入ってきて、教科書を開くように、との指示に従って


机から取り出して開いた


つもりだった


「朝から遅い投稿ですな、珍しい。」


「…たまにはいいだろ?」


前の席の男子がくるりとこちらに顔を向けた

「最近すげー早く来てたのに…って、


お前それ、教科書じゃねーぞ?」





え?




まさかの指摘に、熱さと、寝起きのせいでぼんやりしていた頭がはっきりする



「図書館のやつ?お前、読書とかするんだ。意外〜」


混乱したまま、言葉を返そうとすると


ずぅっと俺の方を向いていた男子
つまりは、先生に向かって背を向けていた訳で


先生の小言が降りかかり、男子はまっすぐ前を向かざるを得なくなった


そこからも授業が続いたけれど
何も頭に入らなかった



手紙だ



小さな、手紙



本はいつものあの、伊織の大好きな本だし


これをするのは伊織しか考えられない


几帳面な、少し主張の控えめな文字は
間違えなく伊織で


『放課後、図書室で待ってます』


そんな、文字が、文が、頭の中を踊る


これ、は


これは、告白、と受け取っていいのかな…⁈