「つけてくれてるんだね」


椅子と机がご丁寧に整列してある教室にいながら


わたしと空くんは、教壇に並んで座った


図書室の時とは違って


距離なんて、存在しなくて


少し寒いこの教室も暖かく感じた


「…え?」


空くんの唐突な言葉に
少し反応が遅れた


「手、ブレスレット」


空くんは、わたしの手首を指差した


クリスマスにもらったプレゼント


わたしはつけていられるときは
つけているようにしてる


つけていると、
いつでも空くんを思い出せるから


「…うん、もちろん」


きらりと、ひまわりのチャームが揺れた


「ひまわりってさ」


どこか遠くを見ながら
思い悩むような顔をしながら
空くんが、口を開く


「太陽の方しか向かないんだって」


そこで、少し沈黙


空くんがうんうん思い悩む様子を見せて


結局わたしの方に向き直った


「だから、伊織もさ


笑顔で


周りの目なんて気にしないでいいから


俺のことを見ててほしい」


そういった空くんの顔は少し赤かった


言葉って、すごい力を持ってるんだって


すごく思う


その言葉は、すうっとわたしの心の中に入って


ストンと


深くまで溶けていった


「周りの目を気にするななんて、
口で言うのは簡単だけどさ…


というか、すげぇ恥ずかしい…」


わたしももちろん恥ずかしくって
真冬なのに、扇風機に当たりたいと思うくらいに体が熱い


「あーーーー!」


「へっ…⁈」


空くんが急に立ち上がった


「ごめん変なこと言った!
えと、部活!部活行ってくるから!」


そう言うと
ばたばたと教室を出ていってしまった





なんだかんだで、空き教室に1人残ってしまったけど


体の奥がじんわりとあったかかった


ちらちら手首で揺れるひまわりを見る


わたしも空くんみたい叫びたい気分だった


恥ずかしいけど嬉しい…!!


そして、わたしのなかに


ひとつの決意が、生まれた