そして、わたしは我に帰る
わたし、何てことを…
急に抱きつくなんて…!
オロオロと、空くんからゆっくり離れた
「ごめ…なさい…!急に…」
「全然いいよ、気にしないで」
そこから、少しの沈黙を挟んで
「伊織、何かあったよね」
コレ、といって渡されたのは
クシャクシャに丸められた紙
受け取って開くと、
見慣れた文字
『空のばか!
伊織大変だったんだからね!
伊織は、図書室だから!』
大胆に、紙いっぱいに書かれた少し丸っこい文字は、湊の字
「湊に、投げられた」
「…そっか」
ご丁寧に、わたしの居場所まで書いてあるところ、
まったく、世話焼きなんだから
と思いつつも
すごく感謝
「噂、伊織は嫌だよな…
嘘の噂だし」
「ごめん、また泣かせて」
違う、あやまらないで
「嫌なんかじゃ、なかった、よ…!」
少し大きめに出た声に、空くんは驚いた顔をした
「全然、嫌なんかじゃ、なかったよ…」
「伊織…」
あ、ちょっと、まって
なんか噂が嬉しいみたいになってる…?
間接的に好きだと伝えているように感じて、
図書室が静かなのもあって
余計恥ずかしくなった
せっかく立ち上がったのに、
またゆっくり床に座ってうつむいた
きっと顔が赤いから
泣いた顔が恥ずかしいから、隠した
もう声で伝えられるほど心に余裕がなくて、ポケットに忍ばせていたケイタイわ使うことした
『ちょっと、昔のことを思い出しちゃったんだ』
そう打ち込んで、画面を空くんの方に向ける
空くんの相槌が聞こえてから
次の文を打つ
『あと、
わたしね、空くんといるとき、周りにどう思われてるのかなって
少し考えてたんだ
わたし、地味だから
目立つ女の子達と違ってぱっとしないし
友だちだって、少ないし
でも、空くんは人気者だから
憧れるし
空くんとわたし、あんまり釣り合ってないんじゃないかなって
わたしのせいで、空くんが悪く言われてしまっていたら、ごめんなさい』

