恋愛文通


体育館を出た


まだ体育館の中では、他の高校が試合をやっている


わたしは、なんだかぼーっとしちゃって
優里はそんなわたしを心配してる


そんなとき


「伊織」


「…空、くん?」

床に座り込んでいたわたしに、黒い影が落ちた


試合が終わってすぐだからか、
影の肩が、ゆっくり上下していた


「…えと、お疲れ様、試合」

「うん、応援ありがとう」


顔を上げると、



いつもより、なんだか空くんはかっこよく見えた


「伊織の声、聞こえたよ!おかげで頑張れた」


「ほ、本当に…?」


わたしの気持ちは、本当に届いてた?


「伊織に嘘、つくと思う?」


…届いてたんだ


届いてた、わたしの声


よかった、ほんとうに


「…たまに、つくでしょ?」


「あれは、話の流れ、だろ?」


安心した
嬉しかった


優里に大感謝


「ありがと、優里」
「今はいいわよ、それは」


ばしっと、私の背中を叩いた
ぶっきらぼうに返すのは、優里の照れ隠し



なんだか、安心しすぎて笑いが出た


「伊織、なんでわらってるの?」


空くんの、そんな質問に


「空くん、すごく、かっこよかったよ」


って、いつもより素直な
答えになっていない返事を返した