「…観覧車だ」


じぃっと、遠くを見つめたら観覧車を見つけた


「あ、あそこの遊園地のやつかな。行ったことある?」


「…一回だけ。でも、観覧車は乗ったことない、かな」


遠い昔に、湊と優里と行ったことがある


でも、湊は高いところが苦手で観覧車だけは乗れなかったんだった


…空くんと、乗ってみたいな


「あ、のね」


勇気を出して、言ってみよう


「次、は空くんと、観覧車、乗ってみたいな、なんて…思うんだ…」


…どうかな?


嫌かな


心臓がばくばくうるさい



空くんは


「うん、次、行こっか!」


笑顔


わたしもつられて笑顔


「次」の約束がこんなに嬉しいなんて


思わず、繋いだ手をぎゅっとしてしまった


空くんもぎゅっと返してくれた


大好き、空くんのことが


大好き


「…そろそろ帰ろっか」


この言葉も、空くんだからこんなにも寂しく感じちゃうのかな


また駅まで歩いて電車に揺られて


あっという間にいつもの街


いつの間にかわたしの家の前


「また明日ね、伊織」


空くんは、家まで送ってくれた


「今日、ありがとう…!」


繋いでいた手がそっと離れる


「約束、覚えといてよ!」


空くんが笑う


「も、もちろん…!」


わたしも笑って手を振った


空くんが見えなくなるまで、気がすむまで


それから部屋に戻って、ベットにダイブ


…楽しかった


手に、空くんのあたたかさをまだ感じる


わたしは手をぎゅっとにぎった