夕暮れの図書室
体育館へ行く前から、少し人が減っていた
下校の時刻まで、一時間あるかな?ってくらいの時間だから少なくなるのも当然だと思う
最後までいてやりますからね、と強い目で貸し出し受付のカウンターにいる先生に念を送って、いつもの席に座った
あとこれが何日続いたとしても、待ち続けよう
そんな希望が湧いてきた
どんどん時計の針は進んでいって、空は深く暗い、切なくなるようなグラデーションへと色がうつりかわって
ついにわたしはひとりになった
正しくは、図書室の先生とふたりっきり、だけど
さっきまでの辛い思いはどこへやら
むしろ、ずっとここで速水くんを待ちたいなって、そう思った
彼方先輩、ありがとうございます
心の中で、先輩に大感謝
…わたしの中にはタイムリミットなんてなくて、いくらでも待ち続けれるけれど
学校にはそれがある
図書室の先生は、そろそろわたしを追い出したい、そんな顔をしていた
『もうちょっと、ダメですか?』
手持ちの、小さいメモ帳に書いて意思表示
「もう、下校時間になるぞ。帰りなさい」
『ダメですか?』
「ダメだ。勉強ならともかく、座ってるだけだろ。帰りなさい」
先生には、座ってるだけにしか見えないかもしれない
でも、
「勉強なんかより、もっと大事なんです!待つって決めたんです!だから…!」
思わず気持ちが高ぶって、声が出た
相手が、4月から通ってる図書室の先生だから、というのも理由の一つだけど
「わ、わかった。でもあと10分だけな」
急に声を出したわたしに驚きながらも、先生は許可してくれた
勉強なんかより、ずっとずっと大事なんだから

