目線を向けると彼、黒曜(コクヨウ)が立っていた。
その手には抱えきれないほどの薔薇がある。
いつものことながら真っ黒な薔薇。
その中には一輪だけ白い薔薇が含まれている。
それは、わたしと彼にふさわしい。
「起きていたんだね、つぐも」
綺麗に口元を緩めて、彼は薔薇を抱えたままわたしに歩みよる。
ベッドのわきにあるガラスのテーブルにそれを置いてから黒曜はわたしを見た。
そっとわたしの頬に触れる冷たく柔らかな感触。
「つぐもは、いつ見ても綺麗だ」
目を細めてさらりと、その白い指にわたしの髪を絡ませる。
「まさに白く美しい薔薇のようなキミは、いつもボクを癒してくれる」
そっと髪に口付けを落とす黒曜は、さながらどこかの国の王子のよう。
それだけ様になっていた。