「壊すのはやめて、その体に刻みつけてあげよう。
丁寧に、優しく。
今まで積み上げてきたキミを壊さないように、じっくりと……」
黒曜はその唇で白い花弁に触れる。
形容し難いその艶やかで恐ろしい姿に、つい魅される。
彼は穏やかでいてなお、どこか狂ったような光を宿した瞳でわたしを見た。
「ゆっくりゆっくり、ボクのコトを刻みつける。
ボクのコトしか考えられないように、他のコト全てをつぐもの中から追い出して、ボクだけで満たしてあげるよ。
その体に教えてあげるよ。
ボクの全ては、つぐもで出来ているってコトを」
黒曜は妖艶に微笑みながら、その手に持っていた白い薔薇を、わたしの髪に挿した。
それが合図。
わたしが壊されていく、残酷で、甘い、狂った時間の始まり。


