「ところで、黒田さんはくれないんですか? 誕生日プレゼント」

 誰の影響か、最近図々しさが身についてしまった私。

「奈由にプレゼントをやる金はないですよー」

 向かいに座る黒田さんは、私に向かって唇を尖らせる。

 やっぱり黒田さんは意地悪な人だ。

 初めの頃は今のような黒田さんの口の悪さに、ショックを受けてばかりいた。
 本気で落ち込んで、一人で泣いてしまったこともあった。

 冗談混じりの言葉だとも分からずに。

 だけど、慣れというのは不思議だと思う。

 黒田さんのいろんな面を見ていく内に、時間が流れる内に。
 今では、少しだけれど言い合いまでできるようになったのだから。


「先月の黒田さんの誕生日には、プレゼントをあげたのに」

 私も口を尖らせて、拗ねたふりをしてみる。

「あの焦げたクッキーのことか?」

「にゃ……にゃんて失礼な! 心をこめた手作りに、手紙までつけたんですよ!」

 『焦げた』というフレーズに動揺し、上手く口が回らなかった。

 また黒田さんにからかわれる。
 そう落胆していると

「冗談だよ。焦げてたのは本当だけど」

 黒田さんはニヤリと笑った。