街の中に異彩を放ちながらそのマンションは建っていた。水柿直哉は、慣れた様子で駐輪場に自転車をおきエレベーターのあるところまで歩いて行った。1ヶ月も通えばこの憶ションにもビビらなくなる。

…40階…

エレベーターが降りてくるのを待っていると後ろから東雲隼人もやってきた。

「よぉ。」

隼人は、片手に缶コーヒーを持ちかったるそうに直哉の横に立った。

「眠いのか?顔、泥だぞ。」

直哉が言うと東雲はフッと笑った。

「泥でも見ようによってはアートだろ?」

…チン…

その場の空気を表すようにエレベーターがなった。二人は乗り込み昇って行った。

部屋の鍵は各自、合鍵をもらっていた。

…カチャ…

「先生?いる?」

直哉が、声をかけたが応答がない。二人は、奥のリビングに進んだ。すると二人の耳に驚く声が入ってきた。

…フン…フア…先生…

…どうした?痛いか。

…ウウン…奥が…変な感じ…

こんなになって。

…ファア…先生ぇ

「何、やらかしてんだ!!」

直哉と東雲が、怒鳴り混むと一ノ瀬と若芽がポカンとこちらを見ていた。

「何が?」

一ノ瀬は、若芽の口に指を入れた状態だった。

「え…あ…二人とも何をしているんだ?」

東雲が言うと

「ああ、若芽が奥歯が痛いんだと。たぶん親知らずだ。」

「…なんだ。」

直哉と東雲は頭に浮かんでいたものを勢いよく払拭させた。紛らわしいことをするなと腹が立った。

二人は、ソファに座りテレビをつけた。テレビではワイドショーが流れていた。直哉は、ふと時計を見た。時計の針は、10時を指していた。主婦層を狙っての番組構成。夫の浮気を題材に名もない俳優たちが再現ドラマを熱演していた。

「暇だぁ~。」

東雲が、背もたれに寄りかかった。

「なあ、先生。依頼来てないの?前回の事件解決して1週間過ぎたしさぁ。ねえ、先生!」

体をウネウネ動かして無駄にあるエネルギーを体から放出していた。直哉は、隣で騒いでいる東雲を無視してあまり興味のないテレビに目を向けていた。

「そんなに暇ならお前たちに用事を使わそう。」

一ノ瀬は、ゆっくりこっちに近づいてきた。そしてガシッと直哉と東雲の頭を鷲掴みするとニッと笑顔を向けてきた。