電話のあとため息をつきながらも剛のお弁当を届けに行く。
そういえば、双子が生まれてから二人っきりの夜ってなかったな。
じゃぁ、今日は気合を入れちゃうかな…。
トコトコ一人で歩く。
剛の会社はどこの会社よりもずば抜けて大きいビル。
このビル自体も半分以上はショッピングセンターとして使っている。
ショッピングセンターは平日なのに人が多くて前に向かって歩くのも困難。
やっとこさ従業員用のエレベーターに乗る。
全部で31回まであるビル。
社長室のある30回のボタンを押す。
なんで31階じゃないかって?
それは…私も聞かされてないの。
30階まで行こうとしたら途中で泊まって扉が開いた。
乗ってくるのはスーツの女の人。
綺麗だな。スタイルいいし、化粧もバッチリ……。
!!!!!
そういえば、化粧してくるの忘れちゃった!
すっぴんだ。どうしよう。恥ずかしい。
乗ってきた女の人は私を見て訝しげに首を傾ける。
『すみませんがお客様。ここは従業員以外立ち入りを禁止しています。お戻りください。』
私、私服だった。
お客と思われても仕方ないね。
「私、お弁当を届けに来たんです。」
お弁当が入った袋を揺らして言う。
『あの、良ければ私がお預かりします。』
「あ、伝えたいことがあるので自分で届けます。」
そうですか。と笑顔で笑いかける女の人。やっぱり、綺麗だな。
この女の人はどの階で降りるんだろう?
そう思っていたら
『あなた、そのお弁当社長に届けに来たんでしょう?』

