「大森様。中にどうぞ。」
通された部屋の真ん中には台に乗った琴葉。眠っている。
近くまで寄って、「琴葉。」
うっすら目を開く琴葉。
驚いた顔をしてこっちを見る。
何ヶ月会ってなかっただろうか。
いや、琴葉の方は会ってたか。眠ってた俺に。
「剛。…おかえりなさぃ。」
琴葉の目尻の雫を拭う。
琴葉の顔が歪んだと思った瞬間。
絶叫。歯をぎゅっと噛んで痛みに耐える琴葉。
「琴葉!頑張れ!」
俺はとっさに琴葉の手を握った。琴葉も握り返す。
けど、だんだん力が小さくなって、腕の力が抜ける。
周りの看護婦が慌ただしく動く。
おい、どういうことだ?
なんだよ…何が起きてるんだよ。
『脈が弱い!』
は?何言ってんだ?

