「苦しい……」
どこからか、クロの声がする。
うるさいなぁ。寝てるんだから静かにしてよ。
「息が……」
見ると、クロは私にぎゅっと抱きしめられ、苦しそうにしていた。
「あ、ごめん」
と言って、クロを離してあげる。
「たく、なんでこいつと寝なきゃならないんだよ」
「なんか言った?」
「別に」
たく、口の悪さをどうにかしないと。
一階へ行き、リビングのソファに座る。
今日は学校休みだから、思う存分、遊べる。
朝食も食べたことだし、クロと色々話すか。
と言っても、クロは私の前でしか話さない。
猫は普通喋らないので、他の人には秘密なのだ。
「クロ行くわよ」
「あら、散歩?リードとかまだないわよ?」
「クロは必要ないもん、ね?」
「にゃぁ~」
ママがいるので、喋れないのだ。
クロを連れて、外に出る。
さて、どこ行こうか。人のいない場所と言えば……。
「ねぇ、クロ。誰もいない場所がいいよね?」
「あぁ、そうだな」
「じゃあ、行こうか」
と言って歩き出した。

「確かに誰もいない場所がいいけど……」
たどり着いたのは、誰も住んでない、屋敷みたいな家。
「なんでここなの!?ねぇ、もっといいとこあるよね!?なんか出たらどうするの!?」
明らかに怖がってる。
そんなに怖いかな。幽霊なんてこの世にいないのに。幽霊なんて信じちゃってバカみたい。
「さっ、行くよ」
「断る!!!」
逃げ出す、クロの尻尾を掴む。
「痛い、やめて離して!」
「さぁ、中に入ろうか?」
「分かった!分かったから離して!」
パッと手を離し、自由にしてあげる。
錆びた鉄の門が少し開いてたので、中に入る。
庭は雑草だらけで、ブランコは座るとこがなく、ただ鎖がぶら下がってるみたいになっていて、雑然としていた。
玄関の前まで来ると、クロが逃げたそうに一歩ずつ後ろに下がるので、抱っこする。
これで逃げられない。
「さて、開けるよ」
「やめて…」
クロの言葉を無視して、玄関の扉を開けた。