クロの様子がおかしい。
なんか、震えてるし、ぎゅっと抱っこしても、嫌がらず、なんか考え事してる。
クロがこうなったのは、何か訳があるはずだ。じゃなきゃ、ご飯を残すなんて有り得ない。
クロがこうなった30分前。私とクロは、散歩していた。

「ん~、いい天気だね!」
「にゃ~」
なんか一人言になってる。よし、一人言やめよう。変な子だと思われる。
歩いてると、知らない人に話しかけられた。
「ねぇ、黒山さんの家って知ってる?」
黒髪の女性が、話しかけてきた。
黒山?どっかで聞いたなぁ。どこだっけ?
「うーん、知らないです」
面倒なので、考えるのをやめた。
「そう、ありがとね」
少し残念そうに言ってどこかへ行ってしまう。
「行こうか、クロ。………クロ?」
クロが震えていた。
「なんでもない…。早く行こうぜ」
と言いつつ、震えてる。
どうしたんだろう?元気ないみたいだし。
「ねぇ、震えてるよ?」
「はっはっはっ、何を言ってるんですか仔猫ちゃん」
明らかにおかしい。棒読みだし。目をそらしてるし。

てなわけで、おかしい。
いったい、何に怯えてるのか分からないが、ここは私が助けてあげないと。
「ねぇ、クロ。いったいどうしたの?」
「なんでもねぇよ。お前には関係ない」
関係ない?
「…あっそ。じゃあ、勝手にしなよ」
部屋にクロだけを残して、私は部屋を出る。
関係ないだなんて、酷い。家族なのに、あんな言い方しなくてもいいじゃん。
「クロのバカ…」
クロ……?
なんだろう、なんか引っ掛かる。
ま、いいか。

次の日、学校。
クロが来てから、初めての学校なわけで…。
「帰りたい…」
休み時間、大好きな『泥棒は名探偵』を読んでても、頭はクロのことを考えていて、本どころじゃない。
初めて友達のいない辛さを知った。
こうなったら、友達を作るか。
辺りを見回す。
どっかに、私と同じぼっちいないかな。
だか、皆仲良く話してて、ぼっちは私だけだった。
……今更だけど、男子にすごく見られてる。
きっと、一人で可哀想とか思ってるんだろ。よけいなお世話だ。
ま、話しかけてくれるまで待つか。
「言っとくが、待つだけでは友達出来ないぞ?」
どこからから、クロの声がした。
そんなはずはない。クロは家で留守番なはずだ。
「クロ……?」
「なんだよ」
「きゃぁぁぁぁ!」
机から急に顔を出すので、悲鳴をあげてしまった。
急いでクロが顔を引っ込める。
「あ………」
ヤバイ、変な子だと思われたかも。もう、卒業するまでぼっちかも。
私の人生終わった。
そう思った時、
「大丈夫?」
男の声がした。
「うん、大丈夫……」
と言って顔をあげる。
「ん???」 
「どうしたの?」
「んっ!!!???」
目の前にいるのは、髪が肩まで伸びた女の子だった。
だか、声は低く、男っぽい。
「女装……の趣味があるの?」
「違うよ!?」
そのやり取りを見て、女子たちが爆笑した。
「祥子、これで何回目だよ!」
「うるさいなぁ、仕方ないじゃん」
「しょうこ?え、女子なの?」
と聞くと、ため息をついた。
「そうだよ。川口祥子って言うの。宜しくね」
「宜しく…」
なんかよく分からないけど、友達になれたのかな?
私の人生これからだね。
「てか、さっきの悲鳴は?」
「あ、えっと、虫がいたの!そう、虫が!」
やっぱ、言い訳向いてない気がする。
「そんなに、虫が嫌いなんだ」
いや、ホントは普通だけどね。
「そうなの。ごめんね、びっくりさせちゃって」
「別にいいよ」
よしっ、友達確保!
良かった、卒業までぼっちとか辛い。
でも、何故クロが?

「さて、クロ。質問タイムね」
ここは屋上。ここなら、誰も来ない。
「どうして、学校にいるの?」
「つまらなかったから、です」
「そう、じゃあ。帰れ」
先生にバレたら、怒られる。
「ちょっと待てよ!話を聞いてくれ!」
「言ってごらんなさい」
「ここ俺の中学なんだ!死ぬ前の、人間だった頃の!」
………え?
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!???」