そんなある日、私はお父さんに話があるとリビングへ連れ出された。
話の内容はなんとなくわかってる。
…きっと病気の話で。
『愛実。お父さんは愛実が誰よりも、何よりも大切なものだ。…でも、お父さんの好きな愛実は、笑顔の愛実だよ』
そう言うと、優しく頭を撫でてくれて。
その大きな手は、すごくすごく暖かかった。
そして、私をぎゅうっと抱きしめて。
『辛いし怖い。知ってるよ。…だけど笑おう。残りの時間、笑ってすごそう。…お母さんがそうだったように』
切なそうに笑うお父さんに、私は抱きついて、子供みたいにたくさん泣いた。
人ってこんなにも涙がでるんだな、と自分でも驚くくらいに、泣いた。
そうだ。
なにも明日死ぬ訳じゃない。
未来こそ無いけれど、今を楽しく生きることはできる。
お父さんは私に、生きることを教えてくれた。

