臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)

 有馬が左ガードを上げて防御の体勢に入った時、彼のガードの隙間に、梅田の左ジャブが伸びていた。


 その後も、寸止めだが有馬は梅田からいいようにパンチを当てられていった。


 終了のブザーが鳴り、リングから出た梅田が一年生全員に口を開く。

「お前らに質問だが、返し技に必要な事は何だ?」

「……動体視力ですか」健太が答える。

「もっと単純に考えろ」梅田は、グローブを外しながら否定した。


「あ、相手が打ってくる事ですか?」

 白鳥がそう言った時、梅田は頷いた。

「そうだ、相手のパンチがあって初めて返し技が出来る。……有馬、今マスボクシングをしたんだが、形式練習で返し技を練習をしていたのと何処が違ってたか言ってみろ」

「……先生が、何のパンチを打ってくるか分からなかったんで大変でした」

 ヘッドギアを被ったまま有馬が答える。