臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)

 大崎の連打をブロックした白鳥が、右のパンチを打った時、大崎はそれを右手でブロックをして左フックを返す。

 だが、白鳥が突っ込みながら打った為、大崎の放った左フックは白鳥の頭を抱えるような形になり、体が密着して膠着状態になった。


「ブレイク! 二人共離れろ」

 梅田の声が練習場に響き、両者は距離をとった。


「白鳥、フォームは気にしなくていいから、今みたいにドンドン打っていけ。……大崎もそのまま打ち合っていいぞ」

 リングの中にいる二人は、飯島をチラッと見て小さく頷いた。


 スパーリングが再開される。

 共に前に出てパンチを打つ為、すぐに接近戦へと移る。すると、両者の実力差が顕著になった。

 高校ボクシングで一学年の差は大きい。白鳥が僅か半年のキャリアなのだが、大崎は一年半だ。まして彼には試合経験もある。

 腰高で単発のパンチを打つ白鳥に対し、大崎は小気味よく二発から三発のコンビネーションを放つ。

 白鳥は、堅いガードで何とか防いでいた。