臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)

「先生、どんな指示を出したんですか?」

 リングから下りた先生に康平が質問した。


「大崎は、元々好戦的で打ち合うタイプなんだよ。二年の中じゃ一番負けん気も強いしな。だからラスト三十秒から打ち合ってもいいって言ったのさ」

「白鳥は大丈夫なんですか?」

「まぁ大丈夫じゃないか。……足はついていってないが、あいつは何気にお前達よりやる気満々だからな」


 飯島が答えた後、二ラウンド目開始のブザーが鳴った。

 一ラウンド目と同様に、大崎が軽いパンチを出しながら、フットワーク使って白鳥を翻弄していた。

 追い足が悪い白鳥のパンチが届かない距離で、大崎がポンポンとパンチを当てる。

 それでも前に出てパンチを出す白鳥だったが、先輩のバックステップやサイドステップで簡単にかわされていた。


 残り一分を切ったところで、大崎がフェイントを入れて左ジャブを突いた。