臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)

「イテェぞ弥生。少しは加減しろよ」

 迷惑そうな顔をした康平が亜樹と綾香を紹介した。

 すると、弥生が神妙な顔をして話す。

「先輩! ……無理を承知でお願いするんですけど、今日だけでいいんで勉強教えて貰えませんか?」


 いきなりの申し出に、亜樹と綾香は顔を見合わせた。


「弥生さんは、どこか行きたい高校でもあるの?」

「はい! 永山高校に行きたいんです」

 亜樹に訊かれて弥生が答える。


「……何か理由でもあるのかな?」

 今度は、チラっと康平を見た綾香が訊いた。


「アハハ! 理由は単純で、ボクシングをやってみたいからなんです。康平ちゃんから聞いたんですが、永山高校はボクシング強いらしいじゃないですか」

「えぇ、確かにうちの高校は強いけど、女子は誰もいないわよね」

 綾香の話を聞いた弥生は、康平を見て睨んでいた。