臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)

「痩せるかは分かんないけど、汗が出て一回の練習で二キロ位は落ちるよ。……でも、最近は筋肉がついて体重が一キロ増えたんだよな」

「康平ちゃんはあまり太っていないからね。ボクシングって、痩せ易いってよく聞くじゃん。……ホラ私って、見方によっちゃデブに見えちゃうんだよねぇ」

「…………」

 返答に困った康平に、弥生がすかさず突っ込む。

「今一瞬固まったよね。空手で体負けしないように、今まで思いっ切り食べてたんだけど康平ちゃんも私をそう思ったんだ」

「そ、そんなことないよ。……それより、数学以外で勉強しないのか?」

 暴力少女の前で下手な事を言えないと思った康平は、無理に話題を変えようとした。


「話題を逸らそうとすんのがミエミエなのよ」

 弥生は康平にヘッドロックをかます。

「おいヤメロよ! みんな見てるじゃないか」

 康平は顔を赤くしながら言ったが、弥生は男子と組み手もやっているせいか、ボディーコンタクトには無頓着なようである。