翌朝、学校へ行こうと玄関で靴を履く康平に、母親が言った。

「康平、最近勉強はしてるの? 成績が二十番以上上がらなかったら携帯電話の話は無しなんだからね」


 夏休みの時、成績が二十番以上上がったら携帯電話を買って貰う約束をしていた。康平はそれを思い出す。

「わ、分かってるさ。今週から日曜日が練習休みだし、こ、これから始めるつもりだったんだよ」

「そう、それならいいんだけど。……でもボクシング部はヒドイわねぇ。練習日と時間がコロコロ変わるでしょ」

「俺達一年生を考えての事だからさ。……成績は上げる予定だから携帯を買う用意はしててね」

「はいはい、分かったわよ。……この話は真緒に内緒だからね。あの子もせがんじゃうから」



 学校の教室へ入った康平に、亜樹が話し掛けた。

「今日は練習休みだよね。学校終わったら図書館行こっか。……ずっと球技大会の練習で、康平も勉強出来なかったでしょ?」

「俺もそれ言おうと思ってたんだ。早く授業終わらねぇかな」

「ちょっとそれ違うんじゃないの? 授業をちゃんと理解するのが優先でしょ!」

 亜樹は笑いながら突っ込みを入れた。