臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)

 カウントをエイトまで数えた先生は、スパーリングを続行させる。


 飯島が訊いた。

「梅田先生、大崎にもっと手を抜かせますか?」

「いや大丈夫ですよ。……飯島先生、このスパーは私が大崎にも指示を出していいですか?」

「……いいですよ。先生には何か考えがあるんですよね?」

「ええ」


 頷いた梅田は、リングに向かって声を張り上げた。

「有馬、左ジャブを出すんだよ」


 有馬が左ジャブを放つと、梅田は再び怒鳴った。

「駄目だ。そんな縮み上がったジャブじゃ、大崎は止まらないんだよ」


 その後も有馬は何発か左ジャブを繰り出すが、ミットで打っていた時のような威力はなく、手打ちのようなパンチになっていた。


「大崎、ガンガンいっていいぞ」

 シカメッ面で梅田が指示を出すと、大崎はガードを上げて前に出始める。