次の週の月曜日、部活で練習場にいる一年生達に梅田が言った。

「今日のスパーリングは、片桐と白鳥の二人だけだ。高田と有馬は、先週言われた癖を直す事に集中しろ」


 シャドーボクシングが終わり、大崎と白鳥がリングの中へ入る。


 開始のブザーが鳴ると、康平は軽くシャドーボクシングをしながらスパーリングを見ていたが、白鳥と体重が近い有馬は、動くのを止めてリングの中の様子をジッと見ていた。


「白鳥君は、頭が動かないから大崎が打ち易いんだよなぁ」

 最近白鳥を指導している飯島は、わざと白鳥へ聞こえるように独り言を言った。


 その声のおかげか、ガードこそ堅いが、棒立ちに近い白鳥の膝がグッと曲がった。

 そして、小さく左へダッキングしながら一歩前へと出る。


「いいぞぉ白鳥! やれば出来るじゃないか」

 のんびりした口調ながら、飯島の声が練習場に響く。