臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)

「洗面器に水を入れて、バシャバシャ顔に掛けろ。その時、マバタキしないようにするんだ」

 梅田が話すと、康平と有馬は拍子抜けしたような顔になった。そして有馬が言った。

「え、そんなんで直るんですか?」

「いつ直るかは分からんし、直る事も断言は出来ん」

「他にいい方法はないんですか?」

「あったら今教えてるんだよ!」

 しつこく訊く有馬に梅田の声が大きくなった。どうやら機嫌が悪くなったようである。

 有馬もそれに気付いて沈黙した。


「水でバシャバシャ掛ける時は祈るんだよ。スパーで目をつぶらないようにってな。……それとシャドーやサンドバッグ打ちでも、パンチを打つ時に目を閉じないように意識しろ」


 梅田の話に康平と有馬は落胆したようで、下を向きながら聞いていた。