臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)

「……それとすいませんでした。もっと接近戦をして高田にフック系のパンチを打たせようとしたんですが、アイツのパンチは半端じゃないですね」

 森谷の話を聞いた梅田は、チラッと康平の方を見る。

 康平は、スパーリングで使った保護具に付いた汗をタオルで拭いていた。彼には今の会話が聞こえていない様子だ。

 梅田は森谷の方へ顔を戻して言った。

「今の話は高田に言うんじゃねぇぞ。……それより、新人戦に向けて何をマスターするか分かってるな?」

「えぇ、左ジャブで近付かせないようにして、相手が強引に入ってきたら左ショートのカウンターですよね?」


 梅田は頷き、再び質問をした。

「左ショートのカウンターはマス(ボクシング)だけで大丈夫か?」

「……大崎と相沢からインファイターになって貰ってマスをしてますが、それだけだと試合で使う自信はないですね」