臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)

 綾香は康平を見てクスリと笑った後、弥生に訊いた。

「ところで弥生ちゃんの相談て、友達の為だったの?」

「いえ、自分の為ですよ! 小さい頃から空手をやってたせいか、足が太くて困ってたんです」

 この日の弥生はピンクのジャージを着ていた。彼女はフィットしている太股を擦りながら言った。


「……でも弥生ちゃんは、そんなに太く見えないよ」

「私って肩幅があるからかなぁ? それでごまかしてるかも……。それと私、腰幅があってお尻も大きいんだよね。お風呂場で見ると気になっちゃうんですよ」


「ブッ!」

 康平は飲んでいたコーヒーを吹き出す。

「康平ちゃん、何想像してんのよ!」

「ち、違うって! ……俺、先に勉強しに行ってるよ」

 気まずくなった康平は、コーヒーを飲み干して立ち上がった。

「待ちなよ康平ちゃん! あんたには大事な仕事があるでしょ!」