臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)

「当然でしょ? スパーリングしなかったらボクシング部へ入る意味無いじゃん」

「そりゃそうだけど、男とスパーリングかよ」

「空手で慣れてるからさ。スパーリングだったら先輩後輩も無いし、健ちゃんも躾られるしね。……ところで康平ちゃんは今体重何キロ?」

「……六十二キロだよ」

「私と二キロしか変わんないんだ。健ちゃんも同じ位だよね?」

「健太も六十一キロって言ってたな。……俺と二キロしか違わないって、お前ろくじゅっ……!」

 康平は話を中断させた。弥生が空手の構えをしていたからだ。


「康平ちゃん! 君は今、地雷の真上で足を上げてる状態だよ」

「ま、待て弥生! 自分から言い出したんだろ? ……綾香も来たようだし、勉強再開しようぜ」

 康平に言われて弥生が入り口の方を見ると、歩いてくる綾香の姿があった。


 ニヤリとした弥生は康平に言った。

「命拾いしたね康平ちゃん。私の地雷は感度いいから気を付ける事ね」