臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)

「康平ちゃん、もっとご飯食べる?」

「……もういいよ。弥生、お前確信犯だろ? わざとらしく俺が座る場所を勧めるしさ」

 康平が諦めた顔で言った。


「まぁね。ココは箸が届くからさ。……それより飲み物欲しいなぁ」

「ば、馬鹿言うなよ! 俺だって金はそんなに持ってねぇぞ」

「さっきも言ったけど、康平ちゃんには何も勉強教えて貰ってないんだよね〜。店の前でシャドーボクシングさせてあげる代わりに、ジュース代で勘弁してあげようと思ってんだよなぁ〜」

「わ、分かったよ。……それと、朝の事はあんまり言うなよ」

「朝? シャドーボクシングの事かな。それとも走ってる事?」

「な、何でそれを知ってんだよ?」

「だって、シャドーだけじゃあんなに汗かかないでしょ? ……走ってる事は内緒にしたいんだ?」

「……あんまり他人に言う事じゃないしさ」

「康平ちゃんのクセにカッコつけちゃって。……ジュース代に免じて内緒にしといてあげるよ」