臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)

「今日は戻って来れないんですか?」

「ごめんね弥生ちゃん。結婚式場は、ここから電車で片道一時間半位かかる所なのよ。ここは日曜日だと五時で閉館だから難しいわね」


「そうですかぁ……」

 ガッカリした表情の弥生だったが、綾香へ視線を移した。

「……じゃあ、綾香さん勉強教えて下さい。お願いします」

「え〜、私、亜樹みたいに上手く教える自信は無いよ」

 弥生に頭を下げられた綾香は、右手を小刻みに振って尻込みしている。


「お前、自己チュー過ぎるだろ! 亜樹と綾香はテスト勉強で来てんだからさ。……それと俺もな」

「あら康平ちゃん、そんな事行っていいの? シャドーボクシングの場所貸してあげないよ」

 最近の康平はランニングの後に、弥生の兄の店先でシャドーボクシングをするのが日課だった。弥生に見つかり、勉強を教える条件付きで練習の許可を貰っていた。