ストーンメルテッド ~すべての真実~


一瞬にして、光は彼女を取り巻き始めた。体中、溶けるように熱い光がまとわりついた。アグライアは、聞き苦しい叫び声を上げる。

 瓶を蹴り上げた衝撃に、足を滑らせたエンデュ。彼は、叫び声を上げるアグライアを険しい表情を浮かべながら見詰めると、片手を床に付け、背中を起き上がらせた。

「ガー! ……ガー」

叫び声は、丸で、野獣の様だった。

激しい痛みに、体中が叫ぶ。彼女は、手を慌ただしく体中、撫で回していた。やがて、光の力は弱まっていった。彼女を取り巻く光は、瞬く間に萎んでいく。アグライアの、激しく鳴り響いていた鼓動の音は、だんだん、緩やかになっていった。

「……お前、何を」

エンデュが見やれば、アグライアはこちらを強く、睨み付け、微かな呟き声を漏らしていた。この声、憎しみが入り混じっている。

 しかし、冷静な表情を浮かべ、エンデュは立ち上がると、ただ、哀れなアグライアを見詰めた。ふと、床を見れば、大きく割れ、砕け散った鏡粉の瓶がある。

鏡粉……ここまでの威力を秘めているとは。彼は、知らなかった。咄嗟に、体が動き、とった行動は不幸中の幸いを呼んだようだ。

 ジュノは、一瞬の出来事に、声を失った。険しい表情を浮かべ、ぜーはー、と吐き息を付くアグライア。彼女は、見開いた目を瞬き一つせず、アグライアを見詰め、細やかな息の音を漏らした。