ゆっくりと風が吹いてる。
優しくて、暖かい風。
大輔の病気も、こんな風に進んでくれればいいのに。
そんな私の気持ちに比例して、大輔はどんどん空に近付いていく。
ずっと、人工呼吸器をつけたまま窓の向こうの景色を見つめてるか、寝てるだけ。
毎日行っているはずなのに、日に日に私から離れていく気がする。
「…ねえ大輔」
「………ん……?」
「…夏祭り一緒に行く?」
先生にこのことを言ったら、1日だけだ、って許可をくれた。
だから、最期になるかも知れないお祭りに、行きたい。
「………う……ん……」
大輔は嬉しそうに笑う。
そして、優しく掠れる声で喋り出す。