「大輔。今日もノート取っといたからね。早く起きて勉強してよ」

何度、この言葉を言っただろう。

何度、起きて欲しいと願っただろう。

そんな想いには気付かず、時間と季節だけが過ぎていく。

「今日は珍しく温かいよ大輔。…もうすぐ春だね。もう椿先輩も、悠貴も卒業だよ。」

2月下旬。

雪も溶けて、短い冬が終わりにかかる。

「…田村ちゃん。」

「…はい…?」

そっと呼ばれて、振り返る。

「…椿先輩……悠…貴も…?」

元恋人同士の二人が、揃って大輔のとこへ来るなんて珍しい。

今までは、椿先輩だけだったり、悠貴だけだったりしたのに。

「…今先生と話して来たんだけどよ、大輔、車イスに乗っけて散歩したらどうだ、って」