『 授業中、春は窓側を向いていた。
私の席は、涼しい廊下側の一番後ろ。
こんなに暑い日、太陽はまぶしく、
室温は32度。みんな先生の話など聞かず、
下敷きやノートでぱたぱた仰いでいる。
私の目は、窓側の前から3番目の席に
釘付けだった。
誰も気づかない、50分の授業は、
あっという間に終わってしまった。
ずっと見ていたい。
あの人の後ろ姿を… 』
「んー…続きは帰ってからにしよっと」
もう夕日が沈みかけて、
教室は赤く染まる。
ケータイの画面が眩しい。
早く帰らないと、門が閉まっちゃう。
ガラガラッ…
教室のドアが開いた。