「何があってん?どないしてん?」

「や、何もないよ(笑)」

いつもの太一の顔。

「何もないって…お前ら」

泣きじゃくる私から離れて
2人で何か話してたと思う。

かーくんが私の鼻をつまんで

「帰ろ」と微笑む。

大好きな顔。

ごめんなさい。何度も謝った。

家に帰りたくないと言うと
かーくんは

「ママには上手いこと言うとくから落ち着くまで俺ん家おったらええよ。おとんはほとんど帰ってけーへんし」

その日から2人は出かけもせず
ずっと一緒にいてくれた。

1週間ほどして帰ると言うと
送ってくと2人が言ってくれた。

家に向かう途中

父が蒸発した事
多額の借金を返す為、皆働き詰めな事
家には借金取りが映画ばりに脅しに来る事
光熱費が払えない事が多々ある事
家は売って引っ越さないといけない事

だから家に居たくなかった事

全て話した。

2人は何も言わず
私の手を握り、歩き続けた。