「でも、いつも仕立ての良いスーツを着ているわよね?」

ブランド品のことはあまり詳しくないので椿の受け入りになるが、鈴木くんの身に着けているスーツやネクタイはどれも、とある高級ブランドの品々で統一されているという。

「あれは、貰い物なんだ。靴とか時計とか、飽きるとただで俺にくれるんだよ」

高級ブランド品をただで他人にあげる人がいるとは……。

その人の金銭感覚もぜひとも問い質してみたい。

「じゃあ、マンションは?」

「大家さんから格安で借りてるんだよ。週イチでオンラインゲームに付き合うって条件で」

……オンラインゲームまで網羅しているとはさすが鈴木くんだ。

呆れを通り越して、尊敬の念を抱いてしまいそうになる。

「安心した?」

「あ……。うん」

問い詰めるネタが尽きてしまうと、素直に頷くしかなかった。

少なくとも路頭に迷うことはない。はっきり分かると、やはりホッとした。