その日、鈴木くんは大きな紙袋を抱えながら我が家へとやって来た。

「それなあに?」

「あ、見る?」

鈴木くんはそう言うと、フローリングの床の上に紙袋をどさりと置いた。

誘われるように紙袋を上から覗き込めば、中には大量のプラスチック製の玉がぎっしりと詰まっていた。

スーパーやおもちゃ売り場なんかで目にする機会の多いそれは……。

「ガチャガチャ?」

「正解!!ひろむくんと陽くんが欲しいって言っていたから、とりあえずあるだけ持ってきたんだ」

鈴木くんは己が持ってきた紙袋をごそごそと漁ると、ガチャガチャの玉をひとつ私に渡してくれた。

……なんか、前にも同じようなシチュエーションがあったような気がする。

その時も戦隊ヒーロー絡みだったような……。

鈴木くんの趣味に対する守備範囲が広すぎるせいで、私はもうついていけません。

渡された玉に力を入れるとカポッと小気味よい音を立てて2つに分かれた。

玉の中からは、桃太郎よろしく小さいフィギュアがこんにちはと言わんばかりに飛び出してくる。

もちろん、中に詰まっていたフィギュアは鈴木くんの好きな戦隊ヒーロー、“セカイジャー”だ。