佐藤さんは俺が買ってきたケーキを美味しそうに頬張っていた。

心底幸せそうな笑顔を見られるなら、いくらでも買ってこようという気持ちになる。

本人は体型を気にしているようだが、太ってもらっても俺は全然構わない。

「あ、チョコレートケーキも一口もらっていい?」

「いいよ」

「ありがと。貴士くんもチーズケーキ食べる?」

一口もらったチーズケーキの美味しさよりも、貴士くん”という響きにジーンと感動してしまう。

いや、もう長かった!!

付き合い出す前から互いに“佐藤さん”“鈴木くん”と呼び合っていたがために、他人行儀な呼び方を継続していたわけだが、それも今日までだ。

「俺も“亜由”って呼んでいいかな?」

「いいよ。私だけ貴士くんって呼んでいたら不公平だもの」

許可が出たので早速呼んでみる。

「亜由」

そう言うと亜由の口から咥えていたフォークがポロリと落ちた。