「だ、ダメだった?」

「すっげえ……照れる」

(……貴士くんも照れることがあるのね)

いつも冷静な貴士くんの新しい一面を発見できて嬉しくなる。

貴士くんにはチョコレートケーキ、自分にはチーズケーキを皿に取り分けると、残りを冷蔵庫にしまう。

貴士くんはまだ動揺から立ち直れていないようで、壁に手をついて深呼吸をしていた。

(もう、大袈裟なんだから)

名前で呼んだだけでそこまで驚くか?と思う一方で。

名前で呼ばれることに慣れてしまったら、この表情も見られなくなってしまうのかと思うと。

(ちょっと、もったいないかも?)

……なんて惜しんでいる自分がいるのだった。