「そういや、お前らいつまで苗字で呼び合うつもりだ?」

「へ?」

私と鈴木くんは互いの顔を見合わせた。今更、名前の呼び方に関して誰かに指摘されるなんて思ってもいなかったからだ。

「それとも、ふたりきりの時は名前で呼んでんのか?」

「いつも通りだけど……」

言われてみれば、確かにそうだ。親しい仲になれば先ほどのドラマのように苗字ではなく名前で呼び合うのが一般的だ。

(気にしたことなかったかも……)

呼び方を変える機会があるとすれば、付き合いたての頃だろう。

ところが私達の場合、鈴木くんの告白から実際に付き合い始めるまでの期間が長すぎて、タイミングを完全に失ってしまったわけである。

「まあ、下手に名前で呼び合って、会社で誰かに聞かれたら困るしね。このままいいんじゃないかな。ね、佐藤さん?」

「そう、よね……」

模範解答のような鈴木くんの意見に慌てて頷くと、台所に行って急須にお湯を注ぎ足す。