「櫂と何の話をしたの?」

ふたりきりになると、佐藤さんは不思議そうに尋ねた。

「うーん。秘密?」

淹れてもらったお茶を啜りながら言うと、佐藤さんの口がへの字に曲がった。

「なにそれ。男同士で分かり合っちゃって、いやな感じー!!」

「叩かないでよー」

圧し掛かられながらポカスカと叩かれると、次第にソファに身体が沈んでいく。

「あーあ。私もラーメン食べたかったー!!」

……今度は食べ物の恨みか。というか本命はこちらか。

「折角だから今度はみんなで行こうか」

「味にはうるさいわよ、私」

「大丈夫。櫂くんも認めた味ですから」

ふふっと互いに笑い合ったかと思うと、佐藤さんは急に俺の胸板にコツンとおでこを押し当てた。

「佐藤さん?」

「鈴木くんがいてくれて良かったな……。あの子、本当に何も言わないから……」

「俺なんてまだまだだよ」

櫂くんにはまだまだ敵わない。

佐藤さんの髪を指で梳かしながら、俺は最大のライバルに賛辞を贈るのだった。