「おかえり」

「ただいま、佐藤さん」

出迎えてくれた佐藤さんの笑顔がやや引き攣っているのは気のせいだと思いたい。

あれか?話が途中だったのに櫂くんを連れ出したのがまずかったのでしょうか?

冷気さえ漂う微笑におののいていると、櫂くんが一歩前に進み出る。

「亜由姉さん、迷惑かけてごめんなさい」

腰を90度に曲げて頭を下げる様子からは、心の底から詫びていることが汲み取れた。

見る見るうちに佐藤さんの表情が和らいでいく。

「もうケンカしたらダメよ?わかった?相手の子にもきちんと謝るのよ」

ぎゅっと櫂くんの身体を引き寄せて背中を叩くと、もう元の仲良し姉弟に戻っていた。

「お風呂湧いているから、先に入ってきなさい」

……一人っ子の俺はこういう姉弟の絆を見ると、羨ましいなと思ってしまうのだった。