「見ての通りの状況だから、今日のお前の飯はなしだかんな。つーか、俺らもまだ食べてないし」

どうやら、腹を空かせているのは俺だけではないようだ。

……それは困った。

まだご飯にありつけないということが判明すると、ぐーっと腹の虫が突然暴れだす。

と同時に、櫂くんの様子に根負けした佐藤さんがリビングの扉に張り付いていた野次馬達に気が付いた。

「こら!!」

扉を開けて一喝されると、弟妹達は一斉に階段を駆け上っていった。

……さすが。慣れている。

逃げ足の早さに感心して完全に出遅れた俺は、佐藤さんの前で小さく手を上げるしかなかった。

「やあ」

「鈴木くんまで……。盗み聞きなんてお行儀が悪いわよ」

笑いで誤魔化そうとしたのが分かったのか、ギロリと睨まれた。

「ごめん、ごめん」

流石にバツが悪かったので素直に謝ると、佐藤さんははあっと深いため息を吐いて頭を掻いた。

よっぽど心労が溜まっているのか、なんだか疲れ切っていた。

「悪いけど少し待っててもらえる?まだ支度できていなくて……」

「大丈夫だよ。今日は……」

チラリと学生服姿を目で追う。

「櫂くん、良かったら俺とラーメンでも食べに行かない?」