「こんばんはー」

今日もみれいゆで買ったお菓子の数々を引っ提げ、佐藤家の玄関をくぐる。

呼び鈴を鳴らさずに、勝手に家の中に入るのはいつものことだ。

合鍵は以前、暑い中待ちぼうけを食わされた挙句、危うく熱中症になりかけるという出来事があった際に佐藤さんからもらった。

留守を預けられるという信頼の証でもある。

死にかけたのも今では良い思い出だ。

鍵をポケットにしまうと、靴を脱いでリビングへと続く廊下を歩く。

(今日の夕飯は何かな……)

魚、野菜ときたら、次は肉だろうか。いやいや、あえてのパスタメニューか?

鼻歌交じりに予想していると、リビングの扉の前に人だかりが出来ているのが見えた。

「何してんの?」

「なんだよ、鈴木かよ。静かにしてろよ。聞こえないだろ」

樹くんはすりガラスに耳を当てて、必死になってリビングの様子を窺っている。

双子とひろむくんも面白がって、樹くんの真似をしている。

4人が縦に並ぶと、完全に廊下が塞がってしまう。