「それで……何で俺のこと避けてたの?」

(やっぱり、聞くわよね……)

私は毛布をもそもそと身体に巻きつけると、寝返りを打って鈴木くんに背中を向けた。

……ついに観念する時が来た。

背中を向けたのは、なけなしの反抗心の表れだ。

「この間……夜、家に来た日。関谷さんと一緒じゃなかった?」

「誰に聞いたの?」

「ロッカールームで噂になってた」

鈴木くんは呆れたようにはあっと息を吐いた。

「出張の帰りに会社に寄ったら、関谷さんにたまたま出くわしたんだ。時間も遅かったから駅まで送っただけ」

毛布の蓑虫と化した私は、恐る恐る鈴木くんを振り返った。

「本当に?」

「俺は佐藤さんに嘘は言わない」

強めの口調で断言されて、シュンと頭を垂れる。

「……ごめんなさい」

素直に謝ると胸の奥に渦巻いていた黒い物がふっと消えてなくなっていった。