私に対しても同様だった。

子供達がいるからと、どこかに出掛けても夜遅くまで引き留めるようなことはしない人だ。

それが、今日はどうしたというのだ。

返信に迷っていると、携帯が震えだして新着メールを知らせた。

“会いたい”

(もう、ずるいんだから……)

私は鈴木くんがたまに投げてくる直球に恐ろしく弱い。

部屋着の上からショールを羽織ると、財布と携帯をポケットに入れた。

「出掛けるの?」

早苗が目聡く尋ねてくる。

「ちょっとコンビニ行ってくる」

「姉ちゃん、コンビニ行くなら“少年ニャンプ”買ってきてよ」

「はいはい」

樹が手についた食べかすをペロリと舐めながら言った。

“少年ニャンプ”は樹の好きな週刊少年漫画雑誌だ。

大学生にもなって毎週ニャンプを買っているなんて恥ずかしいと言ったら、樹にニャンプの面白さを本気で語られたのでもう何も言わないことにしている。