「……どうして佐藤先輩なんですか?」

私はこらえ切れない感情を蛍光灯のスイッチを押そうとしていた鈴木さんにぶつけてしまった。

……どうしても答えが欲しい。

鈴木さんのことを吹っ切れる“何か”がどうしても欲しかった。

「教えてください。どうして佐藤先輩なんですか?」

佐藤先輩と鈴木さんが一緒にいるところを見たことがある。

偶然、帰りが一緒になったのだろう。

鈴木さんははにかんだ笑顔を向けると、路肩を歩く佐藤先輩の肩を引き寄せた。

……私と一緒にいる時には一度も見たことがない表情だった。

だから、余計に知りたい。

どうして、鈴木さんは佐藤先輩が好きなんですか?

鈴木さんは佐藤先輩を侮辱しているともとれる不躾な問いかけに、怒るようなことはしなかった。

「俺にも分からない」

ただ、静かに微笑む。まるで、この場に佐藤先輩がいるかのように。

「ただ……他の人じゃ意味がないんだ。俺が欲しいのは彼女だけだから」

(ずるい)

そんな風に言われたら、諦めるしかないではないか。

「ごめんね。関谷さん」

……私だって鈴木さんのことが好きなのに。