鈴木くんたってのお願いということもあって、樹をはじめとする佐藤家姉弟が全員リビングに集められた。

尋常じゃない雰囲気が伝わったのか、なぜか全員カーペットの上に一列に並んで正座である。

「佐藤さん」

「は、はいっ!!」

名前を呼ばれただけなのに、声が裏返ってしまった。

皆に見守られるようにして、改めて鈴木くんと向かい合う。

鈴木くんは緊張のせいか仄かに顔が赤く、瓶底眼鏡の奥の瞳は潤んでいた。

「もう一度言います。俺と結婚してください」

結婚という単語を聞くと、膝の上で重ねていた拳に力が籠る。

「私……」

樹はああ言ってくれたけれど、何も考えずにただ自分を預けるなんて無責任なこと出来ないよ……。

どう返事をするべきが迷っていると、私の頬に誰かの小さな手が触れた。

「お姉ちゃん、苦しいの?」

正座をしていたはずの恵がいつの間にか私の元に駆け寄って、顔色を確かめようとしていた。

私は人を気遣うことのできる優しい妹を抱きしめた。

「ごめんね……。ありがとう」

「恵」

櫂が咎めるように恵を呼ぶと、後ろ髪を引かれるようにチラチラと私の顔を見ながら元の位置に戻っていった。

すると、今度は鈴木くんが私を安心させるように微笑みながら言うのだった。